ママ薬剤師の家事育児

子供が薬剤師になりたい理由は?小中学生の親へ現役ママ薬剤師からのアドバイス

第一生命が発表した小学生女子が大人になったらなりたい職業で、薬剤師が第9位にランクインしていたそうです。さらに、中学生では11位、高校生では7位にランクインしていたそうで、薬剤師になりたい子供たちが多くて嬉しいです。

ママ薬剤師である私も、女の子のいるママさんからよく「子供が薬剤師になりたいって言っているんだけどどうかな?」と相談されることがあります。

小中学生の皆さんでも薬剤師という職業に興味を持ってくれて嬉しい反面、自分の子供が薬剤師になりたいと言ったら、どうするかなと考えることもあります。

この記事では

  • 子供が薬剤師になりたい理由
  • 自分の子供を薬剤師にしたいかどうか現役薬剤師ママのリアルな本音

をご紹介します。

お子さんの将来の進路に薬剤師を考えているママさんの参考になれば嬉しいです。

子供が薬剤師になりたい理由で小中学生に多いのは?

実際に薬剤師になりたいと考えている子供たちの意見をまとめてみたところ、小学生と中学生では少し違っていました。

私も小学生の時に、友人のお家が薬局を経営して、学校の帰り道に遊びに行ったことで薬剤師という職業を知りました。当時は、お薬作っているのかなくらいにしか思っていませんでしたが、中学生になる頃には、漠然と薬剤師になりたいなと考えていました。

  小学生の理由

小学生が薬剤師になりたい理由としては、

  • 薬剤師との交流
  • 職が安定している
  • 家族に薬剤師がいた
  • 学校の先生からの助言
  • 薬で人々を救いたい
  • 本の影響

があります。

学校の先生や薬剤師と接して薬剤師を志す小学生が多いようです。また、小学生でも職が安定しているからというかなり現実的な理由もありました。

最近だと、薬剤師がヒロインのアンサングシンデレラというドラマの影響で薬剤師に興味を持ってくれた子もいるそうですよ。  

ドラマでは、かなり薬剤師のヒロインが突っ走っていましたが、薬剤師業界のリアルを描いていたので、私もアンサングシンデレラは楽しく見ていました。

中学生の理由

中学生が薬剤師になりたい理由がこちらです。中学生になるとさらに薬剤師になりたい現実的な理由が増えていますね。

  • 薬で人々を救いたい
  • 闘病記を読んで薬を開発したいと思った
  • 化学が得意だったので先生に勧められた
  • 家族に薬剤師がいた
  • 離婚しても手に職があれば安心だと思った
  • 子供の頃に薬剤師の優しさに触れた
  • 理系科目が得意

小学生とは違って、中学生では化学などの理系科目が得意だからという理由が出てきています。

中学校でさらに難しい勉強をするようになり、自分の得意科目を生かすにはどうしたらいいか?という視点で職業を選ぶようになっているのが分かります。

離婚してもという単語が出てくるのも、小学生とは違ってさらに現実的です。確かに、私の先輩にもお子さんが1歳の時に離婚された方がいますが、シングルマザーとして立派にお子さんを育ててらっしゃるので、小さい子供がいても就職先を見つけやすいという点は薬剤師の利点だと思います。

子供が薬剤師になりたいと言ったら親はどうする?

もし、小学生や中学生のお子さんが薬剤師になりたいと言ったら、ぜひ薬学部のある大学を一緒に探してみてください。

私も自分の子供が薬剤師になりたいと言ったら、真っ先にどこで薬剤師になるための勉強ができるのかを考えます。

日本では薬学部を卒業しないと、薬剤師の国家試験を受ける資格を得ることができないため、薬剤師になるには「薬学部を卒業」することが必須条件になります。(もちろん国家試験に受かる必要もあります。)

どこのどの大学に薬学部があって、薬学部に入るにはどれくらい勉強する必要があるのかなども一緒に子供達と話してみてください。お子さんたちの薬剤師になりたいという夢がよりリアルなものになってくると思います。

こちらが現在国内にある薬学部のある大学一覧です。

全ての都道府県にあるわけではないので、実は家の近くに薬学部がない場合も多いです。

北海道・東北地区

関東地区

東京地区

北陸・中部地区

近畿地区

中国・四国地区

九州・沖縄地区

お子さんと日本地図を見ながら、

  • 家から通える範囲にそもそも薬学部があるのか?
  • 行きたい薬学部は国公立なのか?私立なのか?

まずはこの2つを一緒に考えてみてください。

遠方の私立だった場合には、高額な学費だけではなく6年間の生活費なども必要になってきます。

その上で、どこの大学だったら家計的に行かせることができるかを一緒に相談しましょう。薬学部にどうしても進みたいならお金はいくらあっても困りません。

現役ママ薬剤師が子供を薬剤師にしたくない理由

実は、現役の薬剤師である私は、自分の子供を薬剤師にしたいと思ったことは一度もありません。

というのも、薬剤師は確かに資格という点では安定しているように見えるかもしれませんが、薬剤師免許を取るまでにかかる時間や費用に比べて安定していると言えないからです。

理由1:医療系資格ならやっぱり医師が最強

実際に、薬剤師として働いていると、まだまだ医師ありきという風潮は残っています。薬剤師の地位向上に向けて薬剤師業界が動いているものの、まだまだ医師会よりは地位も権力も弱いのが本当のところです。

私自身も医療系では医師免許がまだまだ最強だなと実感する日々を送っています。医療業界では、医薬分業が進んできていますが、まだまだ薬剤師への仕事の認知度も低く、薬局でも医者じゃないんだから色々聞いてくるな!と怒り出す患者さんも少なからずいます。(ちなみに昨日もいました!)

また、薬学部も6年制へと移行して、医師免許を取るのと同じくらい費用がかかるにも関わらず、給料は医師の足元にも及びません。

自分の子供がせっかく高いお金と6年という長い時間をかけて医療系の資格を取るのであれば、薬学部ではなく医学部を勧めたいです。私も従兄弟が数千万かけて私立の医学部へ行きましたが、開業したらすぐにその学費を回収できるくらいに稼いでいるそうです。

薬局業界は、受診控えでかなり打撃を受けていて、少しずつ数年前に戻りつつありますが、中小の薬局ではまだまだ厳しい状況が続いています。

今後も薬局業界は中小企業を中心に厳しい経営が続くところも多いと考えられます。実際に、私が以前働いていた薬局ではボーナス全額カットが行われたこともありました。私はその時はパート薬剤師だったので、そもそもボーナスがないので大きな影響は受けませんでしたが、正社員の方達には大きなダメージだったと思います。

日本は超高齢化社会へと向かっているので薬局がなくなることはないと思いますが、薬剤師の給料が今後上がるかどうかはかなり厳しいと言わざるを得ません。私が薬剤師になった約20年前と比べても薬剤師の給料は上がっていないので、今後も給料平均が上がる可能性は限りなく低いです。

調剤薬局で働く薬剤師の平均年収は、420~590万くらいです。周りの新卒の方たちの話を聞いていると、初任給が400万円くらいからスタートする薬局が多いです。

そこから、管理薬剤師などになって年収が頭打ちになることが多いので、400万円くらいからスタートして、600万円前後で頭打ちという感じです。

最近は薬局業界も24時間体制で患者対応が求められており、営業時間外でも患者さんからの問い合わせに対応できるように薬局の体制を整えなければならなくなっています。24時間いつでも電話対応する必要があったり、緊急時には夜間や休日に関わらずにお薬をお渡ししなければならなかったりと、実質的な拘束時間が長くなっています。

それでも給料は据え置きで変わらずです。

そのため、最近では給料が安い病院や調剤薬局には就職せずに、給料のいいドラッグストアに就職している新卒の方達が増えています。

自分の子供に同じ薬剤師という仕事をしてほしいかと考えると、給料も安くブラックな薬局も多くあまりおすすめできないのがママ薬剤師の本音の部分です。

理由2:薬剤師業界の狭さ

私が自分の子供を薬剤師にしたくない1番大きな理由は、薬剤師業界の狭さです。もちろん薬剤師なので、薬局業界のことはある程度わかっています。ただ、他の業界であったり、世界情勢に目を向ける薬剤師は少なく、毎日の業務を淡々とこなしている感じです。

薬局の規模にもよりますが、女性が多く、異動も少ないので嫌がらせや陰湿ないじめも多く見てきました。

管理薬剤師という管理職になると、月1-3万円程度の手当がつくだけで、残業代が出なくなるので、こき使われて自分自身がメンタルの病気になってしまったという薬剤師さんも多々見てきました。

優しい気が利く薬剤師さんほど、職場の雰囲気が辛くなって薬局を辞めていってしまいます。

私の同級生の薬剤師さんは、新卒でメーカーに就職したけど、出産を機に調剤薬局に転職しました。すると、陰湿な嫌がらせや陰口の多さにうんざりして、1年も経たずにメーカーへ再度転職していました。

調剤薬局は一つ一つはかなり小さい職場なので、陰口が本当に多いです。私はあまり陰口に参加したくないので、お昼休みなどは外で食事を摂るようにしています。

もちろん、どの職場でも陰口や嫌がらせなどの悩みはあるかもしれませんが、私自身も色々な接客業や公務員などをこれまでに経験してきて、圧倒的に世界が狭く陰口が多いのが調剤薬局だと感じています。

たまにみんな穏やかで働きやすい薬局もありますが、人事異動で1人強烈な方が入ってくると一瞬で雰囲気が変わってしまいます。薬局の平和な雰囲気が長くは続かないことが多いです。

自分の子供には人間関係などの悩みに悩まされることなく、自分のやりたい仕事を頑張ってほしいと思うので、薬剤師という職業を選んでほしいとは思えないです。

理由3:とにかく費用がかかる

実は、薬剤師になるには、とにかく費用がかかります。子供が薬剤師になるには、薬学部で勉強する必要があり、6年間で350-1200万円くらいかかります。

1番安いのは、国立大学の薬学部に行く方法で、

  • 入学金 28,200円
  • 学費 535,800円(年間)
  • 6年間総額 3,496,800円

の学費がかかります。

ただ、国立の薬学部に行くためには偏差値が最低でも60以上は必要になってきます。

私立の薬学部の学費は学校によっても差がありますが、

  • 初年度学費 200万円
  • 6年間総額 1000万円

くらいの学費がかかります。

さらに薬剤師になるための実習について別途料金を徴収される場合もあり、追加で60万円前後かかります。

こんなにお金と時間をかけて薬剤師免許を取らなければいけないなら、もっと別の学部でも良いような気がしてきませんか?

1000万円というと、2回国立の大学に通えて、さらに海外留学もできるくらいの金額です。どうしても薬剤師という仕事をしたい、薬剤師になって〇〇がしたいという強い思いがあるのであれば止めませんが、安定した資格が取れるからという理由で選ぶなら、ぜひもう一度考えてみてほしいと思います。

子供を薬剤師にしたいなら覚悟が必要

現役薬剤師として、あまり薬剤師をおすすめしない理由を述べてきましたが、母としては子供の夢は応援してあげたいですよね。

そのため、子供を薬剤師にしたいならぜひ覚悟を持って応援してあげてください。

私立の薬学部では留年率も高く、一発で薬剤師国家試験に受かる可能性もかなり低いです。薬剤師国家試験に受からずに浪人するための人の塾も存在しているほどです。

国立大学の薬剤師国家試験合格率は概ね80%以上ですが、私立大学だと合格率が30%未満のところもあります。2023年の薬剤師国家試験では、青森大学、姫路獨協大学、第一薬科大学、奥羽大学の4校が合格率40%未満となっています。

お子さんの薬剤師になりたいという夢を応援したいのであれば、金銭的にもしっかりと支援できるように貯金しておく必要があります。

まとめ

ここまで薬局の内情や薬剤師になるまでの費用についてお話してきましたが、やはり現役薬剤師である私は自分の子供には、薬剤師はあまりおすすめしたくありません。

薬剤師業界は、なかなか給料も上がらないですし、ブラックな職場も多いです。人間関係の悩みも尽きません。

ママ薬剤師として、薬剤師のリアルを知っているからこそ、自分の子供が薬剤師になりたいと言った場合には、薬剤師業界の実情を伝えて、それでもなりたいと言った場合にだけ応援しようと思っています。

薬剤師を目指すお子さんがいらっしゃるママさんも、ぜひ近くに薬剤師さんがいたら色々聞いてみてくださいね。

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